松井証券に見る、事業家集団としての企業の本分

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2005年と少し前の出版ですが、最近紹介された、こちらの本を読んでいます。松井証券の代表取締役社長、松井道夫氏の著書「好き嫌いで人事」です。

好き嫌いで人事

ご存知のとおり、松井氏は、日本郵船勤務後、1986年、松井証券の2代目社長松井武の長女と結婚し、松井家の婿養子となり、1987年、松井証券に入社。1988年松井証券取締役法人部長、1990年常務取締役営業本部長、1995年代表取締役社長に就任。1998年本格的なネット証券事業参入、同社を信用取引で野村證券を抜き業界トップにした方です。

松井氏は、著書の中で、自社(あえて自身が、と言われていますが)が陥った大企業的な下記の兆候を痛烈に批判します。

・大企業「右ならえ」的な一括採用
・複雑で機械的な「人事評価」
・複雑な組織構造で「たこつぼ」化した内向き組織

これらに、一時期自分も、「傾倒」しかけたが、冷静に企業の本分に立ち返り、これらが茶番であることに気付いたと言います。無味乾燥で血の通わない人事・評価手法は、「その行為自体を業とせざるを得ないサラリーマン人事部長やコンサルタントが考えつきそうな発想」と断じており、手厳しいです。

いわく、どんなに時間をかけて評価指標を積み上げても、あらゆる人が不満を持たない公正な評価が可能かと問われれば「不可能」であり、それに莫大な費用と時間をかけるのであれば、(良い意味で)好き、嫌いでアナログ的な人事配置や評価をする方がよいのではないか、と書いています。

賛否両論あるとは思いますが、私はこの松井社長の考え方にかなり同意です。

私自身の著書にも書きましたが、企業が大規模化すると経営施策もどんどん「細分化」されていきます。そのさいたる例が「人事評価」。機械的で、オペレーショナルな評価制度が業務全体に張り巡らされ、「一体どのような事業目標に対し、どんな人を評価し、育成したいのか」という根本的な問いは忘れられがちです。そして、そのような複雑な人事評価に合わせるように、社員は行動するようになります。

そのような「機械的」「内向き」組織からは、斬新なアイディアや顧客サービスは生まれません。松井社長が著書でも再三書かれているように、「商人」の感覚をどれだけ社員が持ち続けて仕事ができるか、が大企業秒を予防し会社が成長する鍵。その重要な原則を、奇抜な言葉を使いながら、本書で述べています。

日本郵船という大企業出身で、しかも老舗企業を一部上場企業にまで成長させた経験がありながら、「商人」「事業家」の集合体としての企業の本分を見失わない姿勢とリーダーシップ、素晴らしいです。

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