10月下旬発売の新著の執筆に没頭していたため、ブログ執筆が滞ってしまっていました。
これから、また定期的に書いていきます。
さて、「イノベーション」についてです。
先日、ある場で講演をさせていただきました。
講演終了後、企業の人材育成を担当されている方からこのような質問をいただきました。
「どうすれば、イノベーションができる人材を育てられると思いますか?」
おそらく、どの企業でも、
「イノベーションを起こせる人材をもっと育てよう」
という掛け声や号令がトップから飛んでいるはずです。
現場で育成をやる方たちは、大変です。
「イノベーションできる社員をどうすれば育て、輩出していけるんだろう」
と日々頭を悩ませているはずです。
けれど、ちょっと待って欲しいのです。
その前に、
「イノベーションとは一体なんですか?」
という問いを考えていただきたいのです。
イノベーションという言葉に踊らされてしまい、
その言葉が本当は何を意味しているのかわからない、という場合が殆どです。
実態のない「記号(言葉)」に対して、ものすごくコストの高い人たちが、コストの高い投資をしているともいえます。
先日の場だけでなく、どの場でもご説明するのですが、
「イノベーションは、大規模な新規事業開発や、技術的な大発明や、巨額のM&A等を意味する言葉ではない」
ということをまず認識していただきたいです。
私自身の仕事における「イノベーション」の定義は、
「資源の活用のしかたをすこし変えてみることで、顧客の感じる価値と満足を大きく高めること」
です。
資源とは、シニア社員でも、女性社員でも、また能力の発揮できていない若手社員でも、はたまた社内に眠っている技術でも、他部署で製造している製品でも、また新しく市場に出てきた技術でも、なんでもよいです。それらはすべて「資源」ですね。
それらまだ活用されていない資源の使い方を少し変えるとか、新たに資源として活用することで、顧客の感じる満足を大きく高めること。それが、イノベーションです。
たとえば、女性社員を十分に活用できておらず、人的コストがかさんでいた会社が、その女性陣の(隠れた)能力を活用して「女性ならではのきめ細かいサービス」や「お年寄りの独居にも安心してあがらせてもらえる営業活動」にその女性という資源を新しく生かしたとしたら、それはもう「イノベーション」です。
さらに、その「的」となるチャンスをどこに探し出せばよいのか、にもコツがあります。
ドラッカーは、
「変化をチャンスとして活かすのがイノベーションだ」
と言いました。まさに、この通りです。私も、ビジネスでこれをまさに実感しています。
世の中で起きているちょっとした変化、顧客のニーズの変化、人々のライフスタイルの変化、技術の変化、認識の変化、といったものを見つけ、それを「脅威」ではなく「チャンス」としてとらえる。その変化を仕事に活かすことを、イノベーションというのです。
いかがでしょうか。
このように、「イノベーション」を何か大げさで、果てしなくおおきな「偉業」のようにとらえずに、日々の仕事で実践できることとして「定義」すること。まず、そこから始まります。
その上で、「では、このような考え方ができる人をどうすれば育てられるか」という問いを考えるのです。
そこまでくれば、難しくありません。上記のように、定義さえわかってしまえば、あとは「イノベーション」的な考え方を日々の業務で実践し、上記の定義に合うようなイノベーションの発想をし、仕事に変革を起こしている人を、そのインパクトの大小にかかわらず「評価」してあげることです。
そうすれば、徐々に組織に
「これがイノベーション的な発想か」
という共通意識が芽生えてきます。
そう、小さいイノベーション発想ができるひとが、おおきなイノベーション発想もできるものです。
「イノベーションとは何か?」
まず、この定義をしっかり組織で共有しましょう。
あとは、その定義にそって社内で「イノベーション」を議論する場を頻繁にもち、イノベーション行動の実践を奨励していきましょう。そうすれば、1年前よりも確実に、「イノベーションの種」がたくさん生まれていると気づくはずです。