「教える」だけで人は変わらない 〜都並敏史さんの監督経験エピソードから学べること〜

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Facebookにも書きましたが、先週土曜、元サッカー日本代表選手で解説者の都並敏史さんの講演会が横浜であり、参加しました。

都並さんといえば、僕らの世代でサッカーをやっていた人にはあまりに有名ですね。

左サイドバックとしての、激しい守備、果敢なオーバーラップ、正確なクロス。
読売クラブ→ヴェルディの黄金時代を築いたメンバーです。

講演会では、読売クラブ時代のラモス瑠偉さんの厳しい指導エピソード、「ドーハの悲劇」の背景、監督としての失敗から学んだこと、そして世界と日本のサッカー観、など語ってくれて、すごく面白かったです。

都並さんの監督経験(失敗)談には、「マネジメント」の重要な要素が詰まっていました。
ここでは、そのエピソードを簡単にご紹介します。

都並さんは、選手や解説者としては大活躍されてきましたが、監督としてはあまり実績を残せていません。(ベガルタ仙台、セレッソ大阪、横浜FCなどでの監督在任はいずれも1年前後)

ご自身も講演で、そのことを率直に語られていました。特に興味深かったのは、「監督としての能力と考え方の違いをはっきり認識させられた」名将レヴィー・クルピ監督のエピソードです。

都並さんは、元々、「技術理論」「技術指導」に強い自信を持っていました。そこで、セレッソ大阪監督時代に、自身の現役時代と同じサイドバックでプレーするある選手に、毎日、徹底して、情熱を持って「自分の技」を伝え続けたそうです。

けれど結果として、なかなかその選手は都並さんの在任時には覚醒せず、パフォーマンスが上がりませんでした。

しかし翌年、都並さんから監督を受け継いだクルピ監督のもとで、その選手は、大きく躍進します。しかも、都並さんが教えたプレーも完璧に実践していたというのです。

驚いた都並さんは、その選手に即電話しました。

都並さん 「おい、お前すごく良いじゃない。一体何があったんだ。クルピはどんな助言をお前にしたんだ。教えてくれ。」

選手 「いえ、ようやく、僕も落ち着いて都並さんに教えてもらったことができるようになってきて・・感謝しています」

都並さん「そんなことは、どうでもいい。クルピはお前になんて言ったんだ!教えてくれ!」

その選手が語った、クルピ監督から直接言われたアドバイスは、以下の内容だったそうです。

① 「近代サッカーは、両サイドバックのエリアから崩される失点が最も多い。」
② 「監督である自分は、ここから攻められるのが最も嫌だ。何としても、それを避けたい。」
③ 「ここを守る君にとってこのエリアは「君の家」だ。その家の守り方は、君に任せる。」

この明快なメッセージを受け、そのサイドバックの選手は、自分の頭で懸命に考えたそうです。結果、都並さんから受けた技術的アドバイスを「自分自身で」消化し、自分の意思で、グランドで表現できるようになりました。

都並さんはこの話を聞き、「技術や戦略を『教える』」ことに自信を持っていた自分と、「実際に選手を躍動させ、成果をあげる」クルピ監督との違いを痛感したと言います。

同じ監督という立場でしたが、技術を教え込んだ都並さんと、意図と方向性を明確に説明し、やり方は選手に「任せた」クルピ監督。この違いが、何を生み出して、結果を変えたのでしょうか。

「任せることが大事だ」という人は世の中にたくさんいますね。もちろん、スポーツに限らず、会社にも。

けどなぜ、この「任せる」が、人を変え、大きく成長させる原動力になるのでしょうか。

どうやら人間というのは、任されることで、実力(あるいはそれ以上のもの)を発揮する上で不可欠な機能が動きだすようです。

それは、言葉としては使い古されていますが、

・「自発」(自ら、力を発する)
・「主体」(自らが、主役になる)

ということだと私は思います。

誰かから、知識や技術を教えられても、その時点では「主」は、自分ではなく、それを教えてくれる相手のままです。

けれど、

「知識は伝えた。やり方は、君に任せた。」

と言われた時に、主役は「自分」に切り替わります。

自分が主役になることで、

・誇りや責任を自分に強く感じる(燃える)
・自分の中にある経験知や能力を、総動員するようになる
(自分が動かせる資源を最大限に活用しようとし始める)
・状況の変化や想定外の出来事にも、自分の意図でスムーズに反応でき、対応力が高まる

などなど様々なメリットがあり、それがパフォーマンスを変えていくはずです。

ここでは、細かい解説は省きます。ただ、きっと誰もが、多かれ少なかれ、「任せてもらえたこと」で気持ちが大きく変化し、取り組み方が大きく変わったという経験があるはずです。

その経験に照らして、「自分の中であの時どんなことが起きていたんだろう?」と考えるのが良いのかもしれません。そして、そこから見つかった解は、きっとチームをマネジメトしたり、人を指導したりする際に使えるはずです。

都並さんは、志半ばで解任され、かつ自分の後継者のクルピ監督が成果を上げる中、普通であれば悔しさは募っていたはず。けど、持ち前の「素直に学ぶ力」(ご本人談)を発揮され、教え子から率直なフィードバックをもらうことで、都並さんは大きな気づきを得たとおっしゃっていました。

そんな都並さんの姿勢からも、学ぶことがたくさんありそうです。

このエピソードを率直に教えてくれたことに感謝して。

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