あるクライアント企業の皆様と、次回の「マネジメント」に関する講義の内容につきお打合せをしました。そこで、大切なことを自分自身も整理できたので、記録しておきたいと思います。「コミュニケーション」という経営課題についてです。
現代企業の「マネジメント」を考える上で、「会社組織(という箱)」の視点だけで考えることは限界です。と書くと、当たり前のことを言っているようですが、未だに多くの経営書が
・戦略
・業務
・組織構造
・情報技術
・人事評価
といった「箱の管理」を主役としたものが多いのが現実です。
情報化が進む成熟化社会には、「箱」よりも「個」が経営の主役になります。自分自身も含めた「社員個々人」という「人間」がどういう理想や価値観を持って、どんなアイディアを主体的に出し合って仕事をするか、が重要な経営テーマになります。
例えば、グーグルや、facebookなどの成長企業が、「マネジメント」と言っても、もはやそれは経営中枢がどういう経営管理をするか、という意味ではありません。「現場の優秀な社員がどういうアイディアを出して、どのような創造的な仕事をするか」ということが、現代の成長企業における「マネジメント」の主要テーマです。
日本では、まだまだ「マネジメント」というと一部の上位役職者が「箱をどう管理するか」という意味に捉えられがちです。しかし、知識化、情報化が激しく進む現代には、そのようなマネジメントの常識は完全に過去の遺物で、現代のマネジメントの成否は「現場の社員の創造性」にますますかかってきています。
一方で、日本企業が壁にぶつかっているのは、「知識」「アイディア」「想い」といった知識資本を素早く組織内で流通させる媒体である「コミュニケーション」がしっかり機能していないことです。ここでいうコミュニケーションとは「深い対話と意思疎通」を意味していて、単なる情報やデータ授受とは異なります。
・経営の目標や方向性について現場に降りてはくるものの、十分な納得感を持たないまま仕事をしてしまう(結果、思うような成果につながらない)。
・職場の同僚同士や上司・部下の関係でも「本当は伝えたり聞いたりしたい大事なこと」を十分にコミュニケーションできていない
などに悩む会社が多いのが現実です。
こう書くと、「ああ、会社の課題の一つに、コミュニケーションというのは間違いなくあるね」という話によくなるわけです。しかしいつも私は、こういった反応に違和感を感じます。コミュニケーションは、経営課題の一つではなく、「経営課題そのもの」だと思うのです。「本音でのコミュニケーションが機能していない会社は、経営力を著しく毀損している」とさえ言えます。
なぜか?
それが冒頭書いたとおり、現在が「知識労働」の時代だからです。いわゆる知識資本(アイディアや専門知識、有効な情報など)が競争力を大きく左右する時代に、その知識資本を流通させる「コミュニケーション」が停滞しているということは、経営力そのものの低下を意味しています。
我が師でもあるドラッカーもこう言います。
「コミュニケーションとは、組織のありかたそのものだ」
人が集まり、共通の目的に向けて協働するために会社があります。その為に、コミュニケーションが円滑に行なわれていることが不可欠です。それがない会社は、組織のありかたそのものが破綻している、という考えです。(個人商店の集まりにすぎない)
「コミュニケーションはそこそこしているけれど、アクション(行動)につながらない」という意見もよくありますが、私の知る限り、アクションが活発でないのもやはり「コミュニケーション」不足からです。アクションに対して誰かが意見をくれる、励ましてくれる、一緒に関わってくれる、といったコミュニケーションがあるからこそ、アクションが生まれて継続されるからです。
ダイエットやトレーニングをする人が、SNS上で表明することで、まわりからの反応を得て、アクションを継続させられるという仕組みを考えれば明らかですが、コミュニケーションの深さとアクションの質は連動しています。
かつてのような産業資本主役の時代とは異なり、現代はメンバーとの意思疎通や対話を重視しないマネジメントというのはもはや成り立たなくなっています。
本日のお客様との活発な意見交換から、「コミュニケーション」の意義について改めて考えることができました。感謝です。
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