日本代表のキャプテンであり、ドイツのブンデスリーガでも活躍する長谷部誠選手。彼の書籍を読んだ。
「心を整える。」というタイトル。興味深い。
長谷部選手いわく、心とは鼓舞したり制御したりするものではなく、ピアノ等と同様「調律する、整える」ものだという。
この本を読んで、究極の「セルフマネジメント」の本だと感じた。
まず、彼は、特段優れた技術やフィジカルの特徴があるわけではないのに、浦和レッズ時代にはJリーグ、天皇杯、ナビスコカップ、アジアチャンピオンズリーグとタイトルをほぼ全てとっていて、しかも「全ての優勝決定の瞬間にグランドに立っていたチーム唯一の選手」だ。謙虚な人柄で、それをひけらかす感じではないが、そこに僕は「組織に成果を上げさせる原則を知っている人」という印象をもった。事実、彼は自分の強みとして、「組織に足りないものを補足できること」をあげている。地味に聞こえるかもしれないが、これは成果の上げ方(勝ち方)のイメージがないと、決して持つ事のできない考え。あらゆる監督が、彼を重宝する理由が分かる気がする。
組織に成果を上げさせるイメージを持てるから、自らもマネジメントできる。ドラッカーは、「組織も個人も同じ。いかに強みを活かし、成果を上げるかだ。優れたマネージャーは自らをマネジメント(経営)しなければいけない。」と言っている。
セルフマネジメントというと、朝何時に起きて、何をして、といったスケジュール管理的な意味で捉えられがちだが、本質は違う。「自らの強みと成果を上げやすい方法を知り、それに基づいて行動する」ということ。経営の原則と一緒なので、「自身を経営する」と訳されることもある。
長谷部選手が「心を整える」といっていることはまさにそのこと。例えば、「夜の時間をマネジメントする」という記述がある。彼は、夜にテレビをみたり、ゲームをしたり、本を読んでいつの間にか寝てしまっている、ということが絶対にない人だという。翌日成果を上げる為に、睡眠は9〜11時間とっているという。しかも、リラックスをしたり、心を鎮めるために、「誘惑の多い」夜の時間こそ、自分の心を鎮めて翌日の成果に向かえるよう準備しているという。
様々なジャンルの読書もしているとのことで、中国古典や哲学についての記述もある。彼の考えは、東洋思想的なところも強い。儒教の教えにも「修己治人」(しゅうこちじん)という考えがある。まわりをマネジメントしようとすれば、まず自分自身のマネジメントが必要という意味だが、彼はそれを実践している。
決して派手で豪放な感じではいないが、組織と個人の「マネジメントのしかた」すなわち、「成果の上げかた」を身に付けている長谷部選手。
本人も言っているとおり、今後も「山あり谷あり」だと思うが、応援していきたい。
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