「悩まない」マネージャーとは

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ミドルマネージャー向けのトレーニングを依頼頂くと、事前にヒアリングシート等で受講者の方にいくつか質問に答えて頂く。事前課題や課題図書がある場合は、その内容を深く考え理解しているか、といった問いになる。

最後に、必ず聞くのは、
「マネージャーとして、実業務での悩みはどんなことか」
というもの。

上記の他の質問にきちんと回答された方でも(或いはそういう方に限って?)、最後の質問には、
「特にありません」
「なし」
「(ブランク)」
と返ってくることがある。

或いは、「それはマネージャーとしてではなく、一社員としての悩みでしょう」というものもある。

給与や待遇のこと、所属のことなどだ。

僕は、その最後の質問への回答で、マネジメント人材としての可能性を感じる。

マネージャーをやっていて「悩みがない」っていうことがあるだろうか?

「目先の利益を稼がないといけない一方で、長期的な事業成長や人材育成とのバランスをどうとるか」
「コスト競争から脱却するために、どのような新しい売り方、マーケティングが必要か」
「自分が掲げている戦略計画は本当に正しいか、何か見落としている視点はないか」
「人々の気持ちを束ねる強い目標を明示できない。どうすればよいか」

マネジメントという役職の責任、重み、難しさに正面から向き合えば、かならず深い悩みやジレンマがあるはずだ。

自分も事業会社でビジネスをしていた時に、株主からの利益プレッシャーと長期投資のバランスをどうとるか、随分悩んだ。せっかく採用して入社してくれた人材を上手く組織の中で活かせず悩んだことも多い。

正直言って、「マネージャーとしての悩みがない」という人に対して、トレーニングをしたり、コンサルティングをしても意味がない。

「ドラッカーの本、何がおすすめですか?」と聞かれて、僕が「あなたはマネージャーとして何をものすごく悩んでいますか?それ次第です」と聞き返すのもそのためだ。

マネジメントとはそもそも「何とか〜する」という意味。
複雑で答えが見えにくい状況の中で、外部の状況を読み、組織の目標を立て、人材を動機づけて活かしながら成果を上げて行く、そういう責任を担う仕事。

日々悩み、ジレンマの中で奮闘しているマネージャーに、例えばドラッカーであったり、トレーニングは有効だろう。悩みもがく中で「一筋の光」を見出し、気づきやヒントを得られることも多いはずだから。しかし、逆はない。

また、そういう参加者の皆さんから、「理論はそうだが、実現場ではこんな問題がある!」といったようにチャレンジされ、講師も鍛えられ、その激論の中で研修の質も高まって行く。

真摯に悩まないマネージャーの下で仕事をする人は不幸かもしれない。
常に悩み考えていない指導者の下では、組織にイノベーションは生まれない。

今、企業の未来を担う「ミドルマネージャー」層への経営陣からの期待は大きい。

その層へのトレーニング需要も大きい。

是非、「マネジメントとして、自分の悩みは何なのか。何に答えを探しているのか。」につきマネージャー(或いはその予備軍)の皆さんには自問して頂きたい。

変化の激しい時代に、悩まずとも答えが分かりきっているようなビジネスはないはずだから。

 

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