リーダーにはアジェンダを設定する力が不可欠だと言われる。
「アジェンダ」という言葉は、一般企業では「会議での議事」といった趣旨で使われることが多いが、リーダーシップの分野ではもっと重い意味で用いられる。
簡単に言えば、「解決すべき課題群」ということになる。
当然、それは「主観的な判断、思い」のようなものではなく、
■ 今、起きていることの本質的理解
■ 今後、向かうべきゴール
■ 着手すべき優先順位
■ 進め方
といった明確な方向性を、膨大な情報や揺れ動く感情の中で分析し、勇気を持って判断しなければならない、ということだ。
尊敬する某エコノミストの方とお話していた時、その方が「現代の政治家に不足しているのはアジェンダ設定能力」という言い方をされていた。
実は、企業でのリーダー育成プログラムなどを支援させて頂く中でも、同じ状況に直面する。各業務分野では著しく優秀な業績をおさめた皆さんが、リーダーとして今後の組織が向かう方向を定義する「アジェンダ設定能力」になると、著しく不足していると実感する。
もちろん、知識は豊富だし、勉強量も半端ではない。プレゼン資料を作らせたらこれも一級品だ。しかし、特に大企業では「リーダーとして逼迫した状況で悩み決断した経験」が当然多くないため、アジェンダ設定する脳に切り替えていくことは容易ではない。
アジェンダのつもりが、分析資料や論文のようになってしまい、実効性が高まらない。
現在起きている未曾有の大災害で政府や東電の対応を批判することは簡単だが、恵まれた環境にあった日本で「危機」を体感したことのないリーダーがこういう場合に明確なアジェンダ設定を出していく事は容易ではないと思う。
これだけ逼迫した状況でもそれが難しいのであるから、ある程度の「猶予」があると認識される企業の状況などでは、なおさらだろう。(実は猶予が殆どない場合もあるが)
よく言われる事だが、どんなに小さな組織・チームであっても、自ら当事者として責任を負って意思決定する経験の蓄積が不可欠なのだろう。
今回の災害における危機管理の時間軸と、通常の企業の時間軸は違うと思われるかもしれないが、根本は一緒のはずだ。リーダーはあらゆる危機と機会を客観的に分析し、総花的ではなく有効な優先順位を定め、情熱をもって意思決定しなければならない。
悲観的になるわけではなく、政府トップも、電力会社トップの方々も未曾有の危機の中で葛藤しながらアジェンダを作られていると思う。国民として、できることを最大限して、それが機能するように支援したい。
この危機により、自分も含め、多くの「真のリーダー」が日本から誕生することを確信している。
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